2015年11月24日

『ラッセルの英語−熟語篇1』(アマゾン・インターナショナル,2014年7月刊)の「まえがき」

『ラッセルの英語−熟語篇1』(アマゾン・インターナショナル,2014年7月刊/Kindle 版の電子書籍)の「まえがき」より転載

 まえがき

 「ラッセルの英語」シリーズ出版の主な目的は以下の3つです。

 1.ラッセルの多数の著書の中の格言・警句及びそれ以外の模範的な英文を,英語学習の材料として提供すること
 2.ラッセル思想学習のための材料を提供すること
 3.誤訳や不適切な訳を指摘していただき,バートランド・ラッセルのポータルサイトに掲載してあるラッセル関係のコンテンツを修正・改定し,よりよいものにしていくこと
 ( ポータルサイト http://russell-j.com/ )

 バートランド・ラッセルの著書の邦訳書は,バートランド・ラッセル著作集(みすず書房)ほか,過去に非常に多数出版されています。ラッセルの英文は名文として世界的に知られ,1960年代〜1970年代にかけて大学入試では,バートランド・ラッセルとサマセット・モームの英文が一番よく出題されています。従って,当時の大学受験生だったほとんどの方がラッセルという名前を知っていると思われます。
 しかし,(英米ではあいかわらずラッセル関係の図書が多数出版されているにもかかわらず)最近の日本においては,ラッセル関係の図書があまり出版されておらず,残念です。

 ラッセルは膨大な著作を発表しており,雑誌論文・記事として発表しただけで図書のなかに収録されなかったものも多く,現存している書簡も含めて全てを図書(全集)として出版すると,200ページの本で500冊位になるのではないか,と言われています。
 そのため,ラッセル研究者であっても,論理学・理論哲学関係の著作,・社会思想関係の著作(平和運動関係を含む),及びその他の著作(いわゆる一般向けの著作 popular books)といった幅広い分野のラッセルの著作を系統的に読んで理解している人は多いとはいえません。
 
 本書は,「ラッセルの英語」シリーズの第一弾で,「熟語篇」の第1巻です。本書では,ラッセルの著書に出てくる英熟語を100個とりあげ,それぞれにラッセルの著書から2〜3個の用例,代表的な英英辞典や参考書から2,3点ずつ参考例文を採取しています。通常の英語辞書に載っている例文は無味乾燥なものが多く,なかなか理解したり活用したりしにくいものですが,ラッセルの著書の例文であれば,内容豊富であり,英文として信頼でき,多くの方々(退職された団塊の世代を含む!)の参考になるものと考えています。また,引用文献に貼られたリンクをクリックすることで,引用文の前後の英文を閲覧できます。

 最近は政府が率先して英語教育、特にコミュニケーション中心の語学教育を奨励していますが,私は疑問に思っています。確かにビジネス分野などを中心に徹底的な実務英語を身につける英語教育が必要ですが,全ての若い人に強制するのはいかがでしょうか? 子どもや学生の持ち時間は限られています。英語学習の時間が突出すれば他の科目に影響が及びます。英語が◯◯点以上なければ採用しない・昇進させないとかいうのは,特定の企業においては必要でしょうが,それが一般化されるのは困ったものです。
 英語ができなければ採用しない,昇進させないなどという世の中の動きを後押しするような政治家には,数学の国家試験で80点以上とれない(つまり論理的な思考能力が乏しい)ような人物は政治家になれないといったことになったら,どう思うでしょうか? ほとんどの議員が職を失うのではないでしょうか?

 「まえがき」に余分なことを書いてしまいましたが,英語も内容のある材料で学習を続けていきたいものだ,というのが私の願いです。
 誤訳や不適切な訳を見つけられた場合は,是非(奥付にある電子メール宛て)ご連絡いただければ幸いです。(松下彰良)
ラッセルの英語 熟語篇1
posted by russellian-j2 at 14:15| Comment(0) | 日記

2015年11月21日

ラッセルの英単語1』(アマゾン・インターナショナル、2014年8月刊)の「まえがき」から

『ラッセルの英単語1』(アマゾン・インターナショナル、2014年8月刊)の「まえがき」からの転載(ご参考まで)
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まえがき
 英単語集の初期の有名なものに,『赤尾の英単』(旺文社)や森一郎『試験にでる英単語』(青春出版社)などがあります。昔は英語の単語集はそれほど多くありませんでしたので,選ぶのに困りませんでした。しかし現在では, 書店にいくと英単語集がいっぱい並んでいます。どれを選べばよいか迷ってしまいます。
 収録単語の多いものを選ぶか,ネームバリューや執筆者のレベルを重視して『東大英単』や『東工大英単−科学・技術例文集』のようなものを選ぶか。大学受験生だったら,有名予備校の著名な講師が執筆したものを選ぶか?
 大学受験生であれば,多くの単語を覚える必要がありますので,収録単語が多いことと,覚えやすいような端的な説明がつけられているものが第一候補としてあげられます。大学受験生でなければ,収録単語数の多さよりも,語源による説明付きで文学作品その他すぐれた著作からの抜粋(用例)が載っていいるものか,あるいは,誤訳をとりあげた読み物スタイルのもののほうが興味が持てます。
 本書( 『ラッセルの英語−単語篇1』)は,そういった受験勉強や英語学習のための参考書と競い合おうというものではありません。
 日本では特定の思想家の著作に限定した単語集は,『モーム慣用句辞典』(大学書林,1966年)以外だされていないようです。そこで,ラッセルの著作にでてくる重要な熟語や単語について豊富な例文を添えた英語の学習教材を提供したいと考えました。
 「ラッセルの英語」シリーズ出版の主な目的は,次の3つです。(詳しくは,『ラッセルの英語−熟語篇1』のまえがきをお読みいただければ幸いです。)
 1.ラッセルの多数の著書の中の格言・警句及びそれ以外の模範的な英文を,英語学習の教材として提供すること
 2.ラッセル思想学習のための材料を提供すること
 3.誤訳や不適切な訳を指摘していただき,バートランド・ラッセルのポータルサイトに掲載してあるラッセル関係のコンテンツを修正・改定し,よりよいものにしていくこと
 ( ポータルサイト http://russell-j.com/ )
 本書( 『ラッセルの英語−単語篇1』)では,重要な英単語100について,豊富な例文(ラッセルの著書から約230例,ラッセル以外の参考書から約220例,合計で約450の用例を採録しています。通常の英語辞書に載っている例文は無味乾燥なものが多く,なかなか覚えにくく,活用しにくいきらいがありますが,ラッセルの著書の中で使用されている文章であれば,内容が豊富で,英文として信頼でき,多くの方々(退職された団塊の世代を含む!)の参考になるものと考えています。
 また,引用文献に貼られたリンクをクリックすることで,ラッセルのポータルサイト上にアップロードしてあるより詳細なテキスト(英文及び日本語訳)を閲覧することができます。
 最近では,「コミュニケーションための実用英語」が中心です。それも必要ですが,あまり楽しそうではありません。内容のある材料で英語学習を楽しいものにしたいものだと思うしだいです。
 なお,誤訳や不適切な訳を見つけられた場合は,是非(奥付にある電子メール宛て)ご連絡いただければ幸いです。(松下彰良)
ラッセルの英語−単語篇1
posted by russellian-j2 at 14:07| Comment(0) | 日記

2015年05月15日

見かけ上の "as well 〜 as" に要注意

 以下は,明日,『(ほぼ日刊)ラッセルの言葉366』(メルマガ)で配信する予定のものです。
 http://archive.mag2.com/0001626338/index.html
 前後を含めたものは以下に本日掲載しました。
 http://russell-j.com/beginner/OE11-080.HTM

 要注意な点は、"as well as" の構文ではないことです。"own thoughts as regards the attitude" を一塊ととらえる必要があります。そのようにとらえないと,魚津訳(みすず書房版)や堀訳(角川文庫版のような(「自分の思想をはっきりさせることが必要であるように,親に対するどのような態度を子供たちに期待スべきかについても,はっきりさせておく必要がある」といった)誤訳が生まれてしまいます。

(原文)
It is as well to be clear in our own thoughts as regards the attitude we are to expect from children to parents. If parents have the right kind of love for their children, the children's response will be just what the parents desire. The children will be pleased when their parents come, and sorry when they go, unless they are absorbed in some agreeable pursuit; they will look to their parents for help in any trouble, physical or mental, that may arise ; they will dare to be adventurous, because they rely upon their parents' protection in the background -- but this feeling will be hardly conscious except in moments of peril. They will expect their parents to answer their questions, resolve their perplexities, and help them in difficult tasks. Most of what their parents do for them will not enter into their consciousness. They will like their parents, not for providing their board and lodging, but for playing with them, showing them how to do new things, and telling them stories about the world. They will gradually realize that their parents love them, but this ought to be accepted as a natural fact. The affection that they feel for their parents will be quite a different kind from that which they feel for other children. The parent must act with reference to the child, but the child must act with reference to himself and the outer world. That is the essential difference. The child has no important function to perform in relation to his parents. His function is to grow in wisdom and stature, and so long as he does so a healthy parental instinct is satisfied.

(訳例)
 親に対してどのような態度を子供に期待すべきかについて,私たちの考えをはっきりさせておくこともまたよいことであろう。親が我が子に対して正しい愛情を持っているならば,子供の反応は,まさに親の望みどおりのものになるだろう。子供たちは −−何か楽しい遊びに夢中になっているのでないかぎり−− 親が自分の方にやってくれば喜び,行ってしまえば悲しむ。子供たちは,肉体的なことでも,精神的なことでも,困ったことが生じれば親の助けを求める。即ち,子供たちは,思いきって冒険をしようとするであろうが,それは,背後に親の保護を当てにしているからである。だが,この感情は,危機に陥った瞬間を除いてほとんど意識にのぼってこないであろう。子供たちは,親が自分の質問に答え,子供にとって困難な問題を解決し,骨の折れる仕事を手伝ってくれることを期待している。親が子供のためにしてやることは,大部分,子供にの意識にはのぼらない。子供は,親が好きになるだろうが,それは,食事や住むところを与えてくれるからではなく,いっしょに遊んでくれ,子供にとって目新しい事物のやり方を教えてくれ,世の中のいろんな話をしてくれるからである。子供たちは,両親が自分を愛していることをしだいに理解するだろうが,それは,あたりまえの事実として受け取られなければならない。子供が両親に対して感じる愛情は,よその子供たちに対して感じる愛情とはまったく異なるものであろう。親は子供のこととの関連で(念頭において))行動しなければならないが,子供は自分自身と自分の外の世界との関連で(念頭において)行動しなければならない。ここが本質的に違うところである。子供は,親との関連で果たすべき重要な役割をまったく持っていない。子供の役割は,知恵と身体において成長することであり,子供がそのように成長している限り,健全な親の本能は満足するのである。
posted by russellian-j2 at 11:39| Comment(0) | ラッセル『教育論』